「空き家税」という言葉を、最近ニュースで耳にする機会が増えました。
「空き家を持っているだけで税金がかかるの?」
と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実は、各地で進んでいるのは「税金」の議論だけではありません。
共通しているのは、「空き家を放置せず、次の活用や流通につなげる」という流れです。
今年の6月から7月にかけて、京都市、寝屋川市、そして神戸市と、空き家に関わる制度が相次いで報じられていました。
これらは総じて「空き家税」と呼ばれることが多いものの、制度の内容や対象はそれぞれ異なります。
しかし、各自治体の動きを見ていくと、共通して見えてくるのは、「空き家をそのままにしない」という社会の流れです。
今回は、それぞれの制度をご紹介するとともに、その背景にある「住宅活用」の考え方についても考えてみたいと思います。
「空き家税」と呼ばれる制度でも、その内容はそれぞれ異なります
今回話題となっている制度は、いずれも「空き家税」と紹介されることがありますが、目的や対象は自治体によって異なります。
京都市・寝屋川市は、住宅ストックの流通を促し、住まいを必要とする世帯へつなげることが主な目的です。
一方、神戸市は、都心部マンションの適正な維持管理という課題への対応を目的として検討が進められています。
京都市
京都市では、以前から「非居住住宅利活用促進税」の導入について検討が進められてきました。
人口減少が進む一方で、居住実態のない住宅や別荘、セカンドハウスなどが増えていることを背景に、
住宅を必要とする世帯への供給や地域コミュニティの維持を目的とした制度です。
対象は市街化区域内で、課税額は住宅の固定資産評価額などを基に算定される仕組みです。
システム開発の影響から1年延期されましたが、2030年度(令和12年度)の課税開始予定と、今年6月に公表されました。
寝屋川市
寝屋川市では、7月9日に「空き家流通促進税条例」が市議会で可決されました。
居住実態がなく、長期間そのままとなっている空き家に対して課税されるもので、市内全域を対象とする取り組みは全国初とのことです。
売却や賃貸の募集開始から1年以内の住宅や、事業用として使用しているもの、所有者や居住者の死亡によって空き家となったものなどは課税対象外となっており、
空き家を市場へ流通させることを目指しています。
人口密度が高く、新規の住宅地を開発する余地が少ないため、新たな住宅供給の代わりに、
子育て世代や転入世帯など新たな住民の受け皿を確保し、地域の活力維持につなげることも狙いです。
2029年度(令和11年度)課税開始を目指して準備が進められています。
神戸市
神戸市では、「マンション空き住戸への課税」について、有識者会議で検討が進められ、7月24日に最終答申が提出されました。今後、制度の具体化に向けた検討が進められることになります。
背景には、投資目的などで取得された住戸が長期間利用されないことで、将来的にマンションの修繕や建替えに必要な合意形成が難しくなることへの懸念があります。
京都市や寝屋川市が住宅ストックの流通促進を主な目的としているのに対し、神戸市は都心部の一部のマンション空き住戸を対象としたもので、マンションの適正な維持管理という視点がより強い制度となっています。
共通しているのは、「空き家をそのままにしない」という考え方
制度の内容や目的は自治体ごとに異なります。しかし、その背景には共通する流れがあります。
少子高齢化や人口減少が進むなか、空き家は年々増加し、地域の防災や防犯、景観だけでなく、
住宅供給や地域コミュニティにも影響を及ぼす課題となっています。
2023年には改正空き家法が施行され、
「管理不全空き家」という考え方が導入されました。
さらに2024年には相続登記の義務化や「低廉な空き家」に関する仲介手数料の見直しなど、
空き家を適切に管理し、活用や流通につなげるための制度整備が進められています。
そして現在、京都市や寝屋川市では住宅ストックの流通促進へ、神戸市ではマンション管理の適正化へと、
それぞれの地域課題に応じた新たな制度の導入や検討が進んでいます。
アプローチは異なりますが、共通しているのは、
「空き家をそのままにしない」
という考え方です。
売却や賃貸、リフォームによる利活用はもちろん、建物の状態によっては解体し土地を次の世代へ引き継ぐことも選択肢の一つです。
大切なのは、それぞれの空き家やその所有者に合った方法を早めに考え、次の一歩につなげることだと考えます。
「まだ先のこと…」ではないかもしれません
今回ご紹介した京都市・寝屋川市・神戸市以外にも、同じように空き家問題を抱える自治体は少なくありません。
今後、他の自治体でも、地域の事情に応じて、同様の制度や新たな対策が検討される可能性もありそうです。
空き家のことは、いつか考えようと思っているうちに、時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。
実際には、建物は年数とともに老朽化が進み、傷みが大きくなるほど、売却や賃貸、リフォームなどの選択肢が限られてしまう場合があります。
それぞれ異なる事情があり、そのまま住み継ぐことができる住宅もあれば、
売却や賃貸によって新たな住まいとして活用できる住宅もあります。また、リフォームによって価値を高められるケースもあるでしょう。
一方で、老朽化が進んでいる場合には、解体して土地を次の世代へ引き継ぐことが適しているケースもあります。
まず第一は、その空き家にどんな選択肢があるのか を知ることだと言えます。
前回のコラム<「兵庫区の空き家率24.7%から見える 神戸市の空き家事情とは?」>でご紹介したように、
私たちの暮らす神戸市にも多くの空き家があります。
なかでも賃貸用の空き家の多い地域や、まだ活用されていない空き家が多い地域など、状況はさまざまです。
これらの空き家が、今回ご紹介した制度の対象になるとは限りません。
それでも、「対象ではないから、今のところはそのままでいい」とは言えません。
賃貸や売却、建替え、地域での新たな活用など、次につながる可能性を持つ空き家もたくさんあります。
今回ご紹介した京都市や寝屋川市の動きを見ても、自治体が目指しているのは、「空き家を放置しない」という方向です。
空き家の所有者や地域が、「空き家をそのままにせず、次の世代へつないでいく」という選択をしていくことが、これからますます重要になるのではないでしょうか。
「まずは相談してみる」ことが、最初の一歩です
今回ご紹介した制度は、それぞれ内容や対象が異なります。また、今後も制度設計や運用方法が変更される可能性があります。
だからこそ、「自分が所有する空き家・将来所有することになる空き家はどうなるのだろう?」と気になったときは、
一人で悩まず、早めに相談してみることをおすすめします。
相談先は、自治体の空き家相談窓口でも、不動産会社でも構いません。必要に応じて、相続や建築など、それぞれの分野の専門家に相談することもできます。
空き家は、一軒一軒状況が異なります。築年数や立地、建物の状態、ご家族の思いによって、最適な選択肢は変わってきます。
阪神空き家再生機構でも、売却や賃貸、リフォーム、管理など、それぞれの事情に応じたご相談をお受けしています。
まずは、お持ちの空き家や、将来所有することになるかもしれない空き家のことについて、お話をお聞かせください。
「まだ先の話」と思っている今だからこそ、一度立ち止まって考えてみませんか?
空き家は、「どうするか」を決める前に、
まず「どんな選択肢があるのか」を知る ことから始めていただきたいです。
その一歩が、ご自身やご家族の安心につながり、地域の未来にもつながっていくかもしれません。



